あなたは本当に正しい判断ができる?アッシュの実験で知る「集団同調性」の真実
会議で、みんなが賛成している意見に、本当は違和感を覚えているけど口に出せない…。
テレビのコメンテーターが「それはおかしい!」と一斉に批判しているのを見て、自分もそう思うべきだと感じてしまう…。
私たちは、日常生活の様々な場面で、知らず知らずのうちに集団同調性の影響を受けています。
今回は、そんな人間の同調心理を明らかにした、社会心理学の有名な実験「アッシュの実験」の概要と、そこから見えてくる集団圧力の真実について解説します。
アッシュの実験とは?その目的と概要
アッシュの実験は、1950年代に心理学者ソロモン・アッシュが行った研究です。その目的は、「人は、集団の意見にどれだけ同調するのか?」を明らかにすることでした。
実験は非常にシンプルです。被験者は、他の7〜9人の参加者(実は全員サクラ)と一緒に、三つの線のうち、基準の線と同じ長さの線を選ぶ課題に臨みます。
最初の数回は、サクラも正しい答えを言います。しかし、途中でサクラ全員が明らかに間違った答えを言い始めます。この時、被験者はどう行動するのかを観察しました。
衝撃的なアッシュの実験結果:人はなぜ同調するのか?
実験の結果は、アッシュを驚かせました。
約3人に1人の被験者が、明らかに間違っていると分かっていながら、サクラの意見に合わせて同調したのです。
この実験の結論から、アッシュは人が同調する原因を2つの心理的な要因で説明しました。
規範的影響:集団に受け入れられたい、嫌われたくないという集団圧力によって、行動を合わせる心理。
情報的影響:自分よりも多数の意見を「正しい情報」だと判断し、行動を合わせる心理。
つまり、人は「集団から外れることへの恐怖」と「多数派は正しいだろうという思い込み」によって、同調行動を起こしてしまうのです。
アッシュの実験から学ぶ「集団同調性」の具体例
このアッシュの実験から得られる教訓は、日常生活にもたくさん例を見つけることができます。
会議での発言:自分だけ違う意見を言うと、場の空気を壊してしまうのではないかと考え、発言を控えてしまう。
流行:本当に欲しいわけではないのに、みんなが持っているからという理由で、同じものを購入してしまう。
オンラインでの言動:SNSで多数派の意見に同調し、異なる意見を述べることを避けてしまう。
スタンフォード監獄実験が「役割」の力を見せつけたように、アッシュの実験は「集団」の力が個人の判断をいかに歪めるかを示しています。
同調圧力に負けないための3つの対策
同調圧力は、時に私たちの創造性や主体性を奪います。では、それにどう対策すれば良いのでしょうか?
一度立ち止まって考える:集団の意見に流されそうになったら、一度その場を離れ、冷静に「本当にそれが正しいのか?」と自問自答する時間を取りましょう。
自分の意見を持つ:日頃から様々な情報に触れ、自分の考えをしっかりと持つことで、安易な同調を防ぐことができます。
信頼できる人に相談する:集団の外にいる、信頼できる第三者に相談することで、客観的な意見を得ることができます。
まとめ
今回は、アッシュの実験を通して集団同調性の心理学について解説しました。
私たちは、知らず知らずのうちに集団圧力に影響されています。しかし、この同調心理の存在を理解するだけでも、無意識に流されてしまうことを防ぐことができます。