ハッサン・ファトヒー:エジプトが誇る「民衆のための建築家」とその思想
ピラミッドや神殿といった巨大建築のイメージが強いエジプト。しかし、その現代史において、最も尊敬され、世界中の建築家に影響を与え続けている人物の一人が、**ハッサン・ファトヒー(Hassan Fathy)**です。 「貧者のための建築家」として知られる彼は、豪華な高層ビルやコンクリート建築が主流となる中で、その土地に眠る伝統的な知恵と、足元にある「土」を使った持続可能な住まいづくりを提唱しました。 この記事では、ハッサン・ファトヒーの生涯や代表作、そして彼が残した現代にも通じる革新的な思想について詳しく解説します。 1. ハッサン・ファトヒーとは?その哲学と背景 ハッサン・ファトヒーは、エジプト・アレクサンドリア出身の建築家です。彼が活躍した時代は、西洋的なモダニズム建築が世界を席巻し、エジプトでも高価な輸入資材である鉄筋コンクリートが「豊かさの象徴」とされていました。 しかし、彼はその風潮に疑問を投げかけます。 「エジプトの貧しい農民たちが、自分たちの手で、安価に、そして快適に暮らせる家を作るにはどうすればいいか?」 この問いの答えとして彼が辿り着いたのが、数千年前から続く**「泥レンガ(日干しレンガ)」 と 「伝統的な構法」**の再発見でした。 彼の信念:適切なテクノロジー 彼は、高価な機械や材料に頼るのではなく、現地の素材を使い、現地の人々の労働力で建設できる「適切なテクノロジー」を重視しました。これは、現代で言うところの「サステナビリティ(持続可能性)」の先駆けとも言える考え方です。 2. 代表作:ニュー・グルナ村(New Gourna) ファトヒーの名を世界に知らしめたのが、1940年代に進められた**「ニュー・グルナ村」**の建設プロジェクトです。 プロジェクトの目的: 遺跡盗掘を防ぐために立ち退きを迫られた、ルクソール近郊の村人のための新しい居住区を作ること。 特徴: * 泥レンガの活用: ナイル川の泥を成形して乾燥させたレンガを使用。断熱性に優れ、酷暑のエジプトでも室内を涼しく保ちます。 ヌビア式ドームとアーチ: 木材が乏しいエジプトで、支柱なしで屋根をかけるヌビア地方の伝統技法を復活させました。 風を操る知恵: 「マルカフ(風捕り塔)」と呼ばれる煙突状の構造を作り、自然の風を取り込んで室内を冷却するシステムを導入しました。 残念ながら、村人...