自転車と車の事故!もしもの時の対応と過失割合の知識
もしも自転車に乗っている時、あるいは車を運転している時に、自転車と車による人身事故に遭遇してしまったら…。「どうしたらいいの?」「過失割合ってどうなるの?」と、頭が真っ白になってしまうかもしれません。しかし、適切な対応を知っているかどうかで、その後の状況は大きく変わってきます。
この記事では、自転車と車の接触事故(人身事故)が起きてしまった際の具体的な対応手順と、誰もが気になる過失割合の基本的な考え方について、分かりやすく解説します。いざという時に冷静に対応できるよう、ぜひこの知識を頭に入れておきましょう。
事故発生!とるべき行動の5ステップ
人身事故が発生した際は、何よりも負傷者の救護と二次被害の防止が最優先です。以下のステップで冷静に対応しましょう。
ステップ1:負傷者の救護と安全確保
- 負傷者の確認と救護: まずは、相手(または自分)に怪我がないか確認します。怪我人がいれば、すぐに安全な場所へ移動させ、応急処置を行います。意識がない、大量に出血しているなど、重症の場合は迷わず**119番(救急車)**に連絡してください。
- 危険防止措置: 交通量の多い場所であれば、後続車による二次被害を防ぐため、ハザードランプの点灯や発煙筒の使用、三角表示板の設置などで周囲に事故を知らせます。
ステップ2:警察への連絡(110番)
- 人身事故の場合、警察への連絡は必須です。どんなに軽微な事故や怪我だと思っても、必ず110番に連絡し、事故状況を報告してください。
- 警察が到着したら、指示に従い、状況説明を行います。警察が作成する**「実況見分調書」**は、後の示談交渉や裁判で重要な証拠となるため、正確に伝えることが大切です。
- 【注意!】 警察を呼ばないと「交通事故証明書」が発行されず、保険会社への請求や示談交渉がスムーズに進まない可能性があります。
ステップ3:相手の情報確認と証拠収集
- 相手の連絡先を交換: 相手の氏名、連絡先(電話番号、メールアドレス)、住所、車のナンバー、加入している保険会社名と連絡先を交換します。免許証や車検証、保険証券を提示してもらうのが確実です。
- 自分の連絡先も伝える: 相手にも自分の連絡先を正確に伝えます。
- 目撃者の確保: もし事故を目撃した人がいれば、協力を仰ぎ、氏名と連絡先を聞いておきましょう。客観的な証言は、過失割合の判断に役立つことがあります。
- 証拠の記録:
- 写真撮影: 事故直後の車両の位置関係、破損状況、路面の状況(タイヤ痕など)、信号、周辺の交通標識、道路全体の様子などを様々な角度から撮影します。可能であれば動画も有効です。
- メモ: 事故発生の日時、場所、相手の車種や色、目撃者の情報、会話の内容などを詳細にメモしておきましょう。
ステップ4:保険会社への連絡
- 事故発生後、できるだけ速やかに自身が加入している自動車保険会社(自転車保険に加入していればそちらも)に連絡し、事故が起きたことを報告します。
- 保険会社は、その後の示談交渉や手続きをサポートしてくれます。
ステップ5:病院での受診
- たとえ自覚症状がなくても、必ず病院で診察を受けてください。事故直後には症状が出なくても、後から痛みや痺れなどが出る「むちうち」などのケースも少なくありません。
- 医師の診断書は、怪我の証明として保険会社への請求に必要となります。
気になる「過失割合」とは?基本的な考え方
過失割合とは、交通事故が起きた責任が、当事者それぞれにどれくらいあるかを示す割合のことです。たとえば、「自転車:車=20:80」であれば、自転車側に20%、車側に80%の責任がある、と判断されます。この割合に基づいて、損害賠償額が決まります。
過失割合の基本的な基準
過失割合は、事故の状況によって様々ですが、いくつかの基本的な考え方があります。
- 原則として「車」の方が「自転車」より過失が大きい傾向: 車は「動く凶器」とも言われ、そのサイズや速度、衝突時の破壊力から、交通弱者である自転車よりも「注意義務」が重いと判断される傾向にあります。そのため、同等の状況でも、車の方が過失割合が大きくなることが一般的です。
- 個別の具体的な状況で変動: 信号の色、一時停止の有無、飛び出し、わき見運転、飲酒運転、スピード違反など、事故時の具体的な状況や当事者の交通違反の有無によって、過失割合は大きく修正されます。
よくあるケースと過失割合の例(あくまで一例です)
以下の過失割合は、あくまで原則的な考え方であり、個々の事故状況や交渉によって変動する可能性があることをご理解ください。
- 信号機のある交差点での事故:
- 青信号同士: 双方が青信号で進行し、出会い頭に衝突した場合、通常は車:自転車=20:80程度が基本となります。
- 信号無視: 一方が赤信号を無視した場合、赤信号無視側に著しい過失があると判断され、その側の過失割合が非常に大きくなります。
- 例:車が赤信号無視、自転車が青信号で衝突 → 車:自転車=90:10(または100:0に近い)
- 例:自転車が赤信号無視、車が青信号で衝突 → 車:自転車=10:90(または0:100に近い)
- 信号機のない交差点での事故:
- 同幅員の交差点: 優先道路ではない同幅員の交差点で出会い頭に衝突した場合、車:自転車=70:30程度が基本となることが多いです。
- 一時停止規制がある側: 一時停止規制を無視した側が著しく不利になります。
- 例:車に一時停止規制、自転車に規制なし → 車:自転車=80:20
- 例:自転車に一時停止規制、車に規制なし → 車:自転車=20:80
- 直進車と右折車の事故:
- 直進している自転車と右折してきた車が衝突した場合、直進車優先の原則により、右折車の過失が大きくなります。車:自転車=80:20程度が基本です。
- 駐車場など敷地内での事故: 駐車場内など、道路交通法が適用されない場所での事故は、個別の状況判断がより重要になります。徐行義務違反や注意義務違反の程度によって過失割合は大きく変動します。
過失割合の交渉について
過失割合は、警察が決めるものではなく、当事者同士(または保険会社を介して)の話し合いで決めるものです。もし意見が対立する場合は、保険会社や弁護士に相談し、専門的なアドバイスを受けることが重要です。
自転車保険の重要性
近年の法改正や社会情勢の変化に伴い、自転車保険の加入は非常に重要になっています。
- 高額賠償事例の増加: 自転車が加害者となり、高額な賠償責任を負うケースが増えています。
- 例:小学生が自転車で衝突し、高齢者が重い後遺症を負い、約1億円の賠償命令が出たケースなど。
- 義務化の動き: 一部の自治体では、自転車保険への加入が義務化されています。お住まいの地域の条例を確認しましょう。
- 示談交渉のサポート: 多くの自転車保険には、示談交渉代行サービスが付帯しており、万が一の事故の際に心強い味方となってくれます。
まとめ:事故に遭わない・起こさないための心がけ
自転車と車の事故は、誰もが加害者にも被害者にもなり得ます。万が一の事態に備えて適切な対応を知っておくことは重要ですが、何よりも事故に遭わない・起こさないための心がけが大切です。
- 交通ルールを守る: 信号遵守、一時停止、徐行、夜間のライト点灯など、基本的な交通ルールを徹底しましょう。
- 周囲の状況確認: 「かもしれない運転」を心がけ、常に周囲の車や歩行者の動きを予測しながら運転・走行しましょう。
- 自転車の整備: ブレーキやライトの点検を定期的に行い、安全な状態で使用しましょう。
- 安全意識の向上: スマートフォンを操作しながらの「ながら運転」は絶対にやめましょう。
この記事が、あなたのもしもの時の不安を少しでも解消し、安全な交通社会の一助となれば幸いです。